2011年6月23日木曜日

記憶の底から

先週の土日、知人と山梨にあるペンション
「すずらん」へ行ってきました。
ここは昆虫マニアの間では名の知れたペンションで、
ライトトラップ(夜、白い布に電灯をつけて虫をおびきよせる)
を常設しています。
でも、当日は雨で、しかも寒い。もう6月半ばというのに吐く息が白い
んです。もともと高山系の昆虫の宝庫で、いわゆるメジャーなカブトム
シとかはあまり人気がないような雰囲気です。

それでも、そんな日でも虫マニアは集う。

夜になり、雨もやんだようなのでライトトラップを見に行くと、
青白い大きな蛾が止まっていました。
しきりに気味悪がる知人の横で
「オオミズアオ」と僕の口からごく自然にその蛾の名前が
でました。
さっそくケータイでネットに繋いで確かめる知人。
「すごい! どうして知ってるんだ?」
と言われても、僕自身、なぜそんな単語が出たのかわかりません。
というか、「オオミズアオ」なんて単語、生まれて初めて発音した
と思います。

よく、年を取ると、単語が思い出せなくなったりしますよね?
逆に、昔のことはわりとくっきりと思いだしたりして。
たぶん、小学生のときに図鑑で調べたか何かで覚えていたんでしょう。
「オオミズアオ」。
そんなどうでもいい記憶だけが残って、今の大切な記憶が次々に
失われていく。
一瞬、アルジャーノンがアタマをよぎりました。
そういえば、アルジャーノンの名前は覚えているのに、主人公の
名前は、すっかり忘れているのに、今、気がついた。

やがて痴呆老人になっても「オオミズアオ」だけは忘れないというのは
いかがなものか、と思います。

なにか、生活の役に立つんでしょうか? およそ40年ぶりくらいで山梨の
ペンションで初めて披露する機会を得た「オオミズアオ」の名前は?

そういえば、そのペンションで出会ったカミキリムシが専門だという
ご老人に、「いつからカミキリムシ(の研究)をやってらっしゃるんですか?」
と聞いたら平然と「60年」と言われ、こちらは愕然としました。
「60年じゃ、後戻りできないや」
と失礼ながら笑った僕も、40年間「オオミズアオ」がアタマの中に
住みついていたんです。
「40年も忘れないんだったら、後戻りできないかも」

そんな記憶、いらない。

Tommy

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